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免疫・ゲノム医化学研究室長
樋口理 (Osamu HIGUCHI, ph.D.)

自己紹介

理学的思考と臨床的思考の融合が生み出すトランスレーショナル・サイエンスを実践することで、長崎発のユニークな臨床研究と創薬研究の実現を目指す。
趣味:魚釣り。

略歴

1966年(昭和41年)10月21日生まれ
昭和60年03月 福岡県立修猷館高校卒業
平成02年03月 九州大学理学部生物学科卒業
平成10年03月 九州大学大学院理学研究科生物学専攻修了 (理学博士取得)
平成10年04月 東京大学分子細胞生物学研究所 (ポストドクトラルフェロー)
平成15年02月 東京医科歯科大学難治疾患研究所 (准教授)
平成20年10月 東京大学医科学研究所 (准教授)
平成23年04月 長崎川棚医療センター臨床研究部 室長
~ 現在に至る

役職・資格

長崎川棚医療センター臨床研究部・免疫ゲノム医化学研究室長
長崎大学連携大学院教授 (神経免疫学)
熊本大学医学部医学科臨床教授
日本神経免疫学会評議員

現在の研究概要

“自己免疫と発がん研究のクロスオーバー ~Precision Medicineの実現に向けて~”
国立病院機構だからこそできる研究を実践するべく、当臨床研究部は令和元年を迎えたことを契機に、新しい取り組みを開始した。我々が目指すものは、基礎研究と臨床研究の真の融合であり、それに向けた代表的研究の概要を紹介する。

1.抗体機能評価を兼ね備えた自己抗体検査システム
2011年に免疫ゲノム医化学研究室を開所して以来、自己免疫性神経疾患に関連する自己抗体検査技術の開発を一貫して続けてきた。生体試料中の微量な抗体を検出する技術は様々あるが、我々の抗体検査は化学発光や生物発光を利用する仕様となっている (図1)。発光という現象はその名の通り、無の状態から光子が発せられる。つまり、蛍光とは異なり、signal/noiseの比率が非常に高いため、目的の生体分子を高感度に捉えることに適している。実際に、臨床検査業界でも発光技術を基盤とした生体分子検出法が主流になりつつある。 ところで、生体内では標的抗原自体が同じでも、エピトープが異なることで、病原性を持たない自己抗体も存在する。興味深いことに、同一患者であっても、罹患期間中にエピトープ拡散と呼ばれる現象が起きる、つまり、自己抗体が認識するエピトープ分布が変化することが知られている。もし、この現象が多くの自己抗体関連疾患に当てはまるとすれば、臨床現場で実施されている様々な自己抗体検査の判定結果を臨床診断に直結させることには少なからずリスクが潜んでいるかもしれない。すなわち、採血時に病原性を有していない抗体が主体であったとしても、抗体自体は臨床検査データ上では陽性であれば、治療が奏功していないというミスジャッジを誘い、本来は必要ない薬剤の投与の続行を招く可能性がある。

理想であるprecision medicineの概念に則った臨床検査を目指すのであれば、病原性を有した自己抗体を検出するための技術開発が求められる。私達は自己抗体に病原性を付与する生物学的機能を高感度、かつ、定量的に測定できるアッセイ系についても精力的に開発を進めている (図2)。

2.重症筋無力症の分子病態に着目した創薬研究
重症筋無力症 (Myastenia gravis: MG)は、自己抗体が原因と判明している数少ない疾患の1つである。しかしながら、未だにMGの治療において、分子標的薬はごくわずかしか存在しない。当然、「原因が判明しているのに何故?」という疑問が生じる。これは、MG治療の主力であるステロイド剤によって、MGが一定レベルまでであれば治療が可能であることと決して無縁ではない。しかし、今後確実に訪れる超高齢化社会のことを考えれば、ステロイド剤を何十年もの間服用し続けることによる副作用リスクを看過することは困難になっている。そこで、期待されているのが、分子標的薬である。古くからMG治療に用いられているコリンエステラーゼ阻害剤も言うなれば分子標的薬の先駆けであるが、より多くの選択肢、つまり、作用機序が異なる分子標的薬がより多くラインアップされることが理想と考える。最近登場したのが、エクリズマブ (商品名:ソリリス) で、補体タンパク質の1つでC5に結合し、C5開裂を阻害する抗体医薬である。また、MG治療薬として国内では未認可であるが、抗体産生を担うB細胞の膜タンパク質・CD20を標的とするリツキシマブも一部のMGに有効であると海外では報告されている。私達は、これら2つとは作用点が異なる新しいMG治療用の分子標的薬の探索研究に挑戦している。

3.異分野融合型がん創薬プロジェクト
上記にあるように、当臨床研究部では自己免疫神経疾患を対象とした研究が主であるが、そこで蓄積された研究のノウハウを新たながん治療薬創出の研究に活かせないかと考えている。免疫チェックポイント阻害剤に代表されるように、がん免疫治療が脚光を浴びる昨今であるが我々は“自己免疫”と“がん”という異なる研究分野を融合させた「がん創薬研究」に取り組んでいる。

最後に、当臨床研究部では、上記以外にも数多くのプロジェクトに取り組んでいます。参画を希望する方にはいつでも門戸を開いていますので、お気軽にお問い合わせ頂ければと思います。
また、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 医療科学専攻にて、臨床神経科学講座 神経免疫学分野教授も併任しています。大学院入学を希望される場合もご相談頂ければと思います。

連絡先:長崎川棚医療センター臨床研究部 免疫ゲノム医化学室長
樋口 理 (TEL: 0956-82-3121 (代表), E-mail:osmhgc@gmail.com)